Works

しさくの詩集 冬号(第4回しさくの広場)作品No.003

本との隠れ家

 

あぁ、この複雑な世界は
吸って 吐く
そんな単純なことさえできなくさせる。
くるしいくるしい。
息をするため、あの場所に逃げ込もう。

扉を開けば文字が躍り、
タイムリミットまで時が止まる。
虚構の世界に息をのむんだ。
虚構はただの虚構にあらず。
世界を変える力をももつ。

傷を癒やし、力を蓄え、
僕はあの複雑な世界にふたたび挑んでいく。
そっと扉を閉じて、旅立ちの時。
おやすみ僕の隠れ家。

 

(作.蟹座のホープ)


week2 交流週
・蟹座のホープさん、大ファンです。「本との隠れ家」が、蟹座のホープさんにとっては「本当の隠れ家」だったのでしょうか。「複雑な世界」では息苦しくなるが、「本」という「虚構の世界」では「息をのむ」ことができる。「虚構の世界」は「ただの虚構」ではなく、「複雑な世界」を変える力ももつ。「隠れ家」が単なる「逃げ場」ではなく、「傷を癒し、力を蓄え、複雑な世界にふたたび挑んでいく」ための場所になっている。「そっと扉を閉じて、旅立ちの時。」と「おやすみ僕の隠れ家。」がせつなく響きますが、時が来ればまた「隠れ家」にも戻ってきてくれるのでしょう。「複雑な世界」と「隠れ家」の両方を合わせたものが、自分にとっての本当の「世界」なんでしょうね。
・蟹座のホープさんの、ファンです。これから本を読むとき、これまでより少し楽しく読めるようになりたいと思いました。
・「自分にとって『本』はどんなものかな」と考えました。私は、誰に言われた訳でもないのに、「この本を読まなきゃいけない」と勝手に追い詰められていることがあります。また、読むことが楽しくて楽しくて時間を忘れる、というようなことも時々あります。その瞬間がたまらなく気持ちが良いです。読書を通じて「複雑な世界に挑む」というのは私にも経験があるような気がしました。


week3「推敲週」
この詩で伝えたいことは、最初の方が書いてくださった通りです。おっしゃる通り、この詩では、「息」がちょっとしたポイントになっています。
私は小さい頃から本が好きでした。好きな作者のファンタジー小説の新作が発売されると、夢中になって読んだものです。学校で嫌なことがあったり、親に叱られたり、憂鬱な気分で読み始めても、あっというまに本の世界に入り込む。徐々に、ではないんです。あっという間なんです。それがまるで、違う空間、隠れ家に飛び込んだような感覚だと思いました。
実はこの詩をつくった時、現実で落ち込むことがありました。暗い詩にならないようにつくったつもりでしたが、後日、事務局から確認メールが届き、あらためて見てみると、「うわぁ、暗い…」とひいてしまいました(笑)夜書いたラブレターを、朝もう一度読んだ感じ?でしょうか。でも、今読むと、わりとポジティブな詩に感じます。同じ詩なのに不思議ですね。

蟹座のホープ