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第25回 みらいつくり哲学学校オンライン「サラリーマン人生を終えた今、考えること」 開催報告

2020年10月29日(木) 10:30~12:00、第25回となる「みらいつくり哲学学校オンライン」を開催しました。

 

奇数回は、大阪哲学学校編『生きる場からの哲学入門』を課題図書にしています。

今回は、哲学学校に初回から全て参加してくださっている和田さんが、レジュメ作成および報告を担当してくれました。

テーマは、「サラリーマン人生を終えた今、考えること」でした。

 

筆者は生活と労働に関する話から、哲学を展開します。

 

まず、「働く」とは何かを考えます。人は自分のために働き、その働きによって外部に成果物を生み出します。その成果物を生むにはあまたの「骨折り」「苦」「疲」があり、人びとから「(いたわ)られ」「(ねぎら)われ」功ありとして「感謝」されたりします。すなわちこれが「労働」であり、労働には笑顔があると言います。

「労働」とは、労働力の具体的発現(人間が自然に働きかけて生活手段や生産手段をつくり出す活動)であるとし、労働の結果物は「使用する値打ち(価値)」があるか、「交換する値打ち(価値)」があるかというように、その効用が問われます。このことを労働の成果(結果)の一般化と呼ぶそうです。

次に「雇用」とは、当事者の一方が労務に服することを約束し、相手方が報酬を与えることを約束する契約です。これに基づいて「労働」する者が、「雇用労働者(サラリーマン)」になります。
企業体の目的は、「生産、営利」のために継続的に事業を経営することです。出資者、経営者、雇用労働者から構成され、投下資本に見合った利益を追求します。そして利益を様々な形で配分します。

サラリーマンには、経営活動への一体的な努力と活動、仕事にかかわる限りなく広い知識・技倆を習得し、他者と相互助力・支援ができる能力の醸成努力が求められます。中でも、サラリーマンには労働者としての仲間意識醸成の努力が求められるようです。「働く者として、共生の道を求める姿勢が必要」と筆者は主張し、ここに安らぎの場が生まれるといいます。

また、先輩、同僚、後輩との人間関係の調和への配慮と努力が求められ、人的競争には熱烈なものがあるとし、「仕事ができなければ発言権はなく、友愛・支援の影が見出せなければ自然に落下して孤立してゆき、良い美しい仕事はできなくなってゆく」と述べます。

長い時間をかけて資本主義は変化しており、現今の閉塞感のもと、資本主義の将来像が問われていると、筆者は主張します。昨今の問題点として、

① グローバル化の進行、格差・アンバランスさを抱えながらも資本の行く先が減少
② 大量消費社会と実(必)需とにギャップが生じ、「必要は発明の母」から「発明は必要  の母」へと概念が転向
③ 人間自体が商品、部品として取り扱われ、加工への創造がなされている

 

労働の面では、労働の多様化への対応が問われています。具体的には、

① 高度プロフェッショナル概念が拡大、労働強化の実態把握と成果評価の検討
② 「契約社員」の一般化、最低賃金保障、保険等各種補助制度への対応
③ IT活用と労働のシェア展開に伴い、責任の所在への対応

 

上記のような課題をあげ、この他にも、人口減少傾向、移民問題、家事労働、介護労働、格差の拡大などにも対応が必要だとしています。

それらの課題には、今まで多くの時間をかけて蓄積してきた莫大な資産・資本(トータルキャピタル)を積極的に生かしていくべきだ。という提言で今回は締めくくられました。

 

今回のディスカッションは、本文のテーマである「労働」の話題がメインでした。

 

・以前いた職場では、出世や生き残るためには努力が必要というような成果主義な側面があり、成果をあげるのは肉体的・精神的にも大変なことだった。
・組織では、評価の対象が組織に対してで、自分に対する外部からの評価が見えにくい。といった自分の体験に基づいた話が多くでました。

・また、本文の「仕事ができなければ発言権はなく、友愛・支援の影が見出せなければ自然に落下して孤立してゆき、良い美しい仕事はできなくなってゆく」という部分に対して、奇数回でこれまで取り扱ってきた、組織や農のテーマの際には労働とやりがいを結び付けた内容だったが、今回は異なった内容のように感じた。
・世代間で感覚のギャップも多い状況の中、そのような考えは時代に合っていないのではないか。という考えも出てきたりしました。

 

・そもそも、「サラリーマン人生を終えた今、考えること」というテーマで、サラリーマンを終えた人だから感じたこと、そこからの哲学を期待していた。だがそういった内容はなく残念だった、という感想が出ました。

・それを受けて、今回報告をしてくださった和田さんが退職された立場として、

「ずっと退職のタイミングを考えていたが、決められずにいた。病気が発覚しなければ、まだ働いていたかも。退職すれば時間を持て余すと思っていたが、違った。自由だし、今とても充実している。退職して、物事を組織を通してではなく自分の目で見ることができるようになった。生活に困らないのであれば、早くに退職することもおすすめしたい」

というお話を聞かせてくれました。そういう話が聞きたかったんです~と個人的に感じている中で、今回は幕を閉じました。

 

仕事については、様々な考え方があると思います。皆さまにとって仕事はどんなものでしょうか?多くの時間を費やすことですから、より良い付き合い方ができたらいいですね。

 

次回、第26回(偶数回)は、11/5(木)10:30~12:00ハイデガーの『存在と時間』より、第2篇第2章「本来的現存在の証しと決意性」後半(第58~60節)です。

 

第27回(奇数回)は、11/12(木)10:30~12:00『生きる場からの哲学入門』より、「全体主義とは何か―アーレント『全体主義の起源』を手がかりに」を扱います。

レジュメ作成と報告は、東京から哲学学校に参加してくれている陣内俊さんが担当してくれます。

当日参加だけでなく、希望があればアーカイブ動画も共有できます。ぜひ、ご連絡ください。
皆さまのご参加をお待ちしております。

執筆:吉成亜実(みらいつくり研究所 リサーチフェロー兼ライター)

 

 

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