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お便りvol.20_【手稲まちごと巻き寿司文庫】

2025.11.5_公開

今朝は少し雨が降ったようです.

昨日の夕方,私がイェール号の運転をしている時に,
お客さんが来たそうです.
(稲生会のどんぐりの森は,「医療的ケア児の保育園」をコンセプトにした短期入所事業です.
私は,どんぐりの森で子どもたちの送迎車を時々運転しています.)

時々ある,私がいない時にお客さんが来る現象は
必ずしも偶然とは言えません.
私が玄関ドアの内側にいる時の方が,
明らかに通りかかる人たちにとって,本棚が近づきやすくなっているのです.

そんな昨日の夕方,
私の外仕事仲間である森おじが
タイヤ交換を終えて物置で作業をしている時,
本棚を眺めている方がいたそうです.

その方はしばらく眺めていたようで,
森おじが話しかけてくれました.

その方は近くに住んでいるそうで,
もう大きくなった子どもが小さかった時に読んでいた本が
家にたくさんあって,
そのうち2冊を持ってくださったとのこと.

「名前が書いてあるんだけどって気にしてたから,
『住所じゃなきゃ大丈夫じゃない?』って言っておいたわ!」
と森おじが伝えてくれました.

さて,
「私がいない時にお客さんが来る現象」についてです.

「私が玄関ドアの内側にいる時の方が,
明らかに通りかかる人たちにとって,本棚が近づきやすくなっている」
と書きました.
それは,私が外側に座っている時の方が,
通りかかる人が近づきにくくなっている,とも言えるわけです.

この巻き寿司文庫の取組を始めるきっかけの一つである,
旭川で実践されている「まちなかぶんか小屋」の竹田さんとお話ししたことが思い出されます.

まちなかぶんか小屋には,
「たまたまふらっときた雰囲気だけど絶対に今日こそ入ろうと思って来た人たち」
がいるそうです.
そんな人たちとの出会いは,
竹田さんのいう「空間」によるものです.
竹田さんと話したことのメモから抜粋します.


路面店であることの大きさ。いつも手不足であることの大切さ。
「イベントスペース」と掲げてはいるが、よくわからない場所であることも大切。イベントがないときも開けている。
相当の覚悟がないと「空気」はつくれない。
誰かいないと空間として成立しない。
常時開けていることの大切さ。
でも人が来ないようにと祈りながら仕事をしている。
締め切りが迫っている事務仕事をしたいと思いながら。
入ってきそう…来ないで…と思いながら。
大事なのはそこに人がいるという一点。
誰か人がいればそれだけで空間が立ち上がる。何がなくても人が一人いること。


竹田さんの言葉をそのまま理解するなら,
私がいる時には,稲生会事務所の玄関スペースには「空間」が「立ち上がって」いるはずです.
「空間」が立ち上がっていると,通りかかる人は近づきにくくなるのでしょうか.
「空間」が立ち上がっていないと,通りかかる人は近づきやすくなるのでしょうか.

まちなかぶんか小屋は路面店で,
通りに面したガラス越しに,中の様子が少し見えています.
そのガラスの内側には,竹田さんがいるので,空間は立ち上がっているのでしょう.
では,ガラスの外側はどうなのでしょう.
「たまたまふらっときた雰囲気だけど絶対に今日こそ入ろうと思って来た人たち」は,
どこに位置づくのでしょうか.

ここまで考えてわかるのは,たぶん,
「空間」は,ガラスの内側と外側でくっきりと分かれていない.
「空間」は,地図の等高線のように,なだらかに立ち上がっていたり立ち上がっていなかったりしている.
のか?

私がまちごと文庫を開店している稲生会の事務所の玄関スペースは,
空間が立ち上がったり立ち上がらなかったりする場所.
立ち上がったり立ち上がらなかったりする,ということは,
ここでいう空間の等高線は,揺れ動いています.

まちなかぶんか小屋の視察の際,旭川行きのJRの車内で,つねちゃん・西さん・久保さん・松井の4人で話したことがありました.
それは,共同体・コミュニティについてでした.
久保さんは,みらいつくり大学の取組について共通した問題意識をもっています.
みらいつくり大学が,いつものメンバーの集まりになってしまっている,と久保さんは話します.
「新しく来る人たちが入りにくい」,久保さんからは閉鎖的に見える場面があるとのこと.
車内で話題になったのは,閉じられていることによって生まれる安心感があるのでは,ということでした.
完全に開かれている場は,とても不安定で,安心できる場所をは言えないような気がします.
でも,閉じられてしまった場は,部分最適化されていって深まりも発展も起きないでしょう.
車内で話し,その後に竹田さんとも話したその時点での結論は,
「バランスが大事」ということでした.
いい感じに,開かれ,閉じられている.
それは,空間が立ち上がったり立ち上がらなかったりしていることと繋がっているような気がします.
いい感じに空間が立ち上がること.
等高線的空間が揺れていること.

巻き寿司文庫が,稲生会が,医療が,いい感じに開かれたら(閉じられたら)いいな,
日のあたる暖かい場所に椅子をずらして,
手稲山の,終わりかけの紅葉を見ながら,
そんなことを考えました.

もう少し考えられそう.
もう少し考えたい.
結論が出ないまま,今日は終わりでーす.

2025.11.5
みらいつくり研究所
手稲まちごと巻き寿司文庫 店主 まついかい